夫の協力

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夫婦と住いうまでもなく”夫と妻”で成り立っているコンビである。妊娠を願って妻が何ヵ月も治療に通っているとき、夫の側は、実にさまざまな対応ぶりをみせるものだ。
A子さんの夫は、十カ月目に初めて顔をみせた。あいさつ抜きで、「いったい、どないなってますねン」と、かみつくように言う。
検査に四カ月、治療に半年少々。それで早くもシピレを切らしたのだ。
「カゼや腹痛の治療とはわけが違います。じっくり長い目で見守ってくださいよ」。こんなときは、そう答えるしかない。
B子さんが診療について、持って回ったような質問を私にするようになったのは半年目である。その質問の内容が中途半端だったり、アヤフヤなことが多い。
よく聞いてみると、すべてご主人の差しがね。つまり、いい加減な医学的知識をどこからか仕込んできてはB子さんに吹きこみ、私の診療に疑問をさしはさむ役割を果たしていたのだ。
これじゃ時間ばかりかかるうえ、B子さん自身の精神衛生上、大マイナスである。
卵管が詰まっている。手術するほかに手はない。そう決まると、たいていのご主人がやってくる。大半が初対面だ。もう一度、一から説明してくれと必ず注文がつく。だが、ご安心なさい。待ち望んでいた子どもができて不幸になるはずがない。第一、ご主人の生活パターンが一変しますよ。
夫婦間で問題が出たとき、複雑であればあるほど解決に時間が掛かります。


「女房が痛い目しますんや。手術する以上は、必ず妊娠すると保証してもらわなければ・・・」
こんな〃条件″を持ち出したのは、C子さんの夫だった。


出典:出会い

正しい治療でイタチごっこは避けましょう。

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検査の結果、Jさんは妊娠していた。
「ほ、ほんとうですか!」
Jさんは、思わず上ずつた声をあげた。無理もない。半年余にわたる子宮内膜症とのたたかいに、ついに打ち勝ったのだから・・・・
子宮内膜症は、子宮筋腫に劣らぬほど厄介な病気だ。子宮の内部を覆っている内膜は本来、受精卵が着床する場所である。
妊娠が成立しなければ、この内膜の細胞は発育を止め、月に一度は内膜を壊して出血し、子宮外へ出ていく。これが正常な月経だ。
ところが、内膜症になると、この内膜の細胞が子宮内の筋肉の中へ潜って筋腫に似た形になったり、卵巣や卵管、腹膜の表面にくっついて発育し、月経のときは同じように出血する。
卵巣の中へ入るとチョコレート蕊腫になり、ときには癒着を起こして卵管を閉鎖してしまったりする。
Jさんの症状は、子宮の筋肉内に入りこんだケースだった。卵巣も少しはれてきている。こんなとき、一般的には子宮や卵巣の悪い部分を取ってしまうものだ。
だが、Jさんは二十六歳。結婚して二年で、まだ子どもはない。
「先生、お願いします。なんとか一人でも赤ちゃんができてからにしてください」
体を震わせて、Jさんは懇願した。
面倒見が良いオンナはモテます。あなたも頑張ってパートナーを見つけましょう。
こういうケースの場合、私はできる限り子宮を残す方針である。残しておいて、内膜症が進む前に妊娠するよう万全の手を打つ方法をとる。

出典元:

待合室情報

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いつもと少し様子が違うな。そう想いながら診察室へ迎え入れると、案のじょう、M子さんはズバリと切り出した。
「先生、私、手術してほしいのです」
まさに籔から棒だ、M子さんは治療にとりかかってまだ一カ月目。手術どころか、検査結果をもとにこれからじっくり治療に取り組もうという状態である。
「でも先生、私、待合室で聞いたんです。卵管を何か手術してもろたら、うまいこと妊娠したって・・・。手術できるなら、早うそうしてほしい思って・・・。」
私のクリニックは、どうしても待ち時間が多くなる。そこで、待合室は雑談の花が咲く。
いろんな体験、かつてかかった医師の評判、うまくいった患者の例、亭主のタナおろし・・・内容はさまざまだが、そこで一番こまるのはM子さんのように「他人のうけた治療を自分にもして
もらいたがる」ということだ。
「あのネ、手術は最後の手段なんですよ。そう、みだりに切るもんじゃない。第一ネ、お腹のなかは本来、真空状態でしょ。
それを空気にさらすことになるわけだから、手術ということは本当に大変なことなんですよ」
早く目的を達したい、という気持ちは、もちろん理解できる。しかし、既製服売場じゃあるまいし、勝手にサイズや好みの色を決めて注文されても応じるわけにはいかないのである。
結婚相手を探し始めようとしているなら、
”待合室情報”の誤りといえば、こんな話も珍しくない。
「確かAさんは私と同じ薬で、同じ治療をしてもろてはったはずです。生理の状態も生活環境もそんなに変わらへんのやから、当然やろうねえ言うて、二人で話し合ったこともあるんですよ。
そやのに先生、なんでAさんだけがうまいこといって、私はまだ妊娠しないんですか!」
素人判断を医療の場に持ち込まれるほど迷惑なことはない。たとえ同じ薬を出していても、注射は同じものであっても、その与え方、使い方は十人十色。
こまかい症状に応じて微妙に異なるのが普通である。
「排卵だって、そうでしょ。先月と今月とでは排卵の状態も時期も一人ひとりみんな違うものなんですよ。だから、薬もそれに応じて変えてゆく。それが生きた治療というものです」
ホルモン剤ひとつ例にとっても、出血をとめる効能と、逆に出血を促す作用がある。要は与え方なのだが、その辺のところは患者さんに一々わかる事柄ではあるまい。
「へ-ん、そんなものなんですかねえ」―”待合室情報”の誤りは、なかなか際限がないようである。

出典:出会い系 サクラいない

人工授精について

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人工授精には次の二つの種類があります。
1.配偶者間人工授精(AIH)
2.非配偶者間人工授糀(AID)
1の配偶者問は、夫の精子を用いて行うもので、人工授精をしている人の大部分を占めています。
人工授精というと、他人の精子を使うもの、という認職はまちがいです。
夫の精子は自然妊娠を望むときは、最低1ml中に4000~5000万を必要とします。このことを誤解して、うちの夫は4000万だから大丈夫と思うのは大まちがいです。
できれば一地中に8000万ぐらいあるほうがよいのです。たとえ8000万でも精子がうまく女性側(子宮)に進入しなければ人工授精の適応になります。
2の非配偶者間は他人の精子を用いるものです。
夫の精子がまったくない場合とかそれに近いとき、また遺伝的な問題のある場合に夫婦の合意、とりわけ夫の意志を重視して行います(私のクリニックでは夫の意志を特に重視し、夫婦のカウンセリングを行った上で決めることにしています)。
日本の専門医の場合、原則として現役医学生の精子を当然ABO式血液型をその夫婦の血液型に合わせて行います。
夫婦の血液型を無視して行うことは医師としてのモラルに反します。
素敵な結婚相手を見つけても結婚後に問題は発生した場合、ここに書いてあるように意外と改善に手間がかかります。気を付けましょう。
外国では一般人の精子を貯蔵して行っていますが、精子提供者の範囲を拡大することはいろいろと問題を生ずることになると日本の不妊症の専門医は考えています。

出典:結婚相談所 選び方

悩みを越えて

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「あなた、ここはよーく考えてくださいよ。自分の女房の体に他人の精子が入るんです。考え方によっては、不貞だともいえる。それでもいいのですか。
男として、十分に悩んだすえ決めたんですか」
人工授精を依頼にきた夫婦を前にして、私は夫のほうに必ずこう言うことにしている。ときには「義子をもらったほうが、いいんじゃないの?」と水を向けることもある。
奥さんに対しては、必ず将来の不安を問いかける。
「人工授精の子どもだったら、あとで離婚されるかもしれませんよ。”この子、オレの子やない”なんていわれる心配はないんですか。ご主人をそんなに信頼して大丈夫なんですか?」
家庭で十分に話し合い、お互いに百%納得してからやってきた場合はいい、そうじゃないとき、とくに夫の側がイヤイヤ来たというケースのときには、目の前で夫婦ゲンカが始まったりする。
「みてみィ。先生も賛成できん言うてはるぞ」と夫。
「なに言うてるの。家では承知したくせに・・・」と妻。
コミュニケーションは大切です。
そこで私は、きびしく言い渡す。
「こういうことは、強制したら絶対にダメ。もっと二人で悩んで、悩んで、悩みぬくこと。どんな手段でもいい、純粋に子どもがほしい。
愛する妻の血が半分でもまじっていたらいい、という心境に達したら、出直してきなさい。この夫婦なら大丈夫、子どもができたら必ず幸せになれる、と納得しない限り、
私は絶対に引き受けませんよ」

参考: